2015-01-25

日本の向かう先は 2 USDJPY マーケット分析

QE実施国を先導に、各主要国が自国通貨安誘導政策を繰り広げている。

その中で、先行した米国とスイスは特異な性格を持つこととなった。

最終的に自国通貨高になったのである。


これは、本来のあるべき姿だろう。

他国に比して経済力をつけることは、通貨信用力が増し、フェアバリューは上昇することになる。

経済成長が株高を呼び、結果的に通貨高となるスキームである。


ところが、日本をはじめ、その他の国々ではどうだろうか。

株価を押し上げることには成功しているが、自国通貨は下落(マネタリーベースを拡大し、通貨安誘導しているから当然だが)してしまった。


米国のQE1、QE2期間に見られるドルインデックスの下落が、これに該当するだろう。

中期的に通貨安方向に振れた後、景気が好転し、QEの真の効果が表れ出すと、通貨高方向へと振れるのが狙いのシナリオと言えそうだ。



本題のUSDJPYの今後であるが、この銘柄に対する現状での価格決定要因の主たるものは、以下と考えている。

・米株価
・原油価格
・日本株価
・米国長期国債金利
・他国を含めた、国際的なマネタリーベースバランス


フェアバリュー決定の前提条件である期間設定だが、日本の異次元緩和が終了するであろう1年後(MAR-2016)を切り取ってみたいと思う。



まず、米株だが、これは原油価格とも密接に関連してしまうが、独立して考えれば上昇一途と考えて良さそうだ。

景気指数は好調を維持し、政策金利引き上げも視野に入れている状況で、原油問題を除けば、下げ材料を探すほうが困難だろう。

資本主義経済が生んだ負の側面=「貧富の差の拡大」(国家間)が、ますます顕著化してくるであろう。



続いて、原油価格の予測についてだが、正直、筆者のスキルレベルをはるかに超えている。(テクニカル分析の手掛かりさえ見つからない)

恐らく、主要因であろうロシアのウクライナ問題が解決(経済制裁解除)に向かわない限り、原油価格の下落は止まらない可能性が高い。

1年後を見た場合、下落速度は緩やかになるだろうが、トレンドは継続しているとみている。

最悪のケースは、ロシアのデフォルト(まずない「はず」だが)により、世界経済が混乱(世界同時株安)してしまうことだろう。

世界恐慌になった場合、リスク回避通貨である日本円は、対米ドルで上昇し、USDJPYは下落することが予想される。



続いて、日本株だが、現状では米株連動性が強く、主体性のない値動きが続いている。

先の記事でも触れたが、自律下落を日銀、GPIFが買い支えているというように見えてしまう。

個別株価、新興株価が上がらない中で、日経平均だけが上がる局面が見受けられるのも、日経平均を下げたくない思惑の表れと感じてしまう。

「アベノミクス」の名のもとでの、日経平均とUSDJPYを同時に買うオペレーション(アルゴリズム系)スキームが、少しずつ崩れてきている可能性がある。

市場原理とは相反するスキーム(本来株高は通貨高圧力)であるため、いつかは是正されるであろう。

とはいっても、黒田日銀総裁の言葉「デフレ脱却のため、できることは何でもする」を思い出したい。

日本の場合、約束された物価上昇を実現する最も効果的な方法は、自国通貨価値を下げ、外貨価値を上げることだ。

輸入大国日本は、原材料、食材の多くを輸入に頼っている。

つまり、中期的に円安に導くことで、みかけだろうが何だろうが、輪転機がオーバーヒートするまで、とにかく物価を押し上げることに注力することは確実だ。



次に、米国長期国債の利回り低下懸念だが、筆者はUSDJPYへの影響は少ないとみている。

米国独り勝ちの状況下で、米国債が低リスク投資先に選択されることは容易に想像でき、ドルインデックスと逆相関関係で利回りは下がっていっても、なんら不思議ではない。



最後に、マネタリーベースバランス(各国通貨の流通量の偏り)だが、米ドルはQEを終え、マネタリーベースは横ばい推移、日本円はQE中であり増加中、ユーロはMAR-2015から増加局面を迎えるところだ。


EURJPY、GBPJPY、AUDJPYといった主要クロス円通貨は、すでに短期の高安勝負付けが円高方向で終わろうとしている。

だが、USDJPYをこれらクロス円と同列で扱うのは危険だ。

その気になれば、米国にUSDJPYの買い支えを依頼することだって想定される。

「目的達成のために、手段を選ばない」、「アベノミクスにおける円安誘導は必達事項」だ。



リスク要因だが、スイス中銀の事例でも分かるように、相次ぐQEによる為替市場の肥大化によって、一国の中央銀行が介入により相場誘導できる限界を超えつつあるかもしれない。

だが、日本には米国という巨大国家がついている。

リスク回避策は既に打っていると考えるのが妥当だろう。


黒田日銀総裁の21-JANの記者会見での、ECBの金融緩和の可能性を問われた際の「にやりとした微笑み」。

ユーロマネーの日本流入(日本株買い)予測のゆるぎない自信の表れではないか。

その黒田総裁の言葉「デフレ脱却のため、できることは何でもする」は、デフレ脱却は通過点の一つであって、真の狙いである「日本の生き残り」をかけた代表者としての決意表明と受けとった。



次回へ続く。



#Forex #Trading

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