その中で、先行した米国とスイスは特異な性格を持つこととなった。
最終的に自国通貨高になったのである。
これは、本来のあるべき姿だろう。
他国に比して経済力をつけることは、通貨信用力が増し、フェアバリューは上昇することになる。
経済成長が株高を呼び、結果的に通貨高となるスキームである。
ところが、日本をはじめ、その他の国々ではどうだろうか。
株価を押し上げることには成功しているが、自国通貨は下落(マネタリーベースを拡大し、通貨安誘導しているから当然だが)してしまった。
米国のQE1、QE2期間に見られるドルインデックスの下落が、これに該当するだろう。
中期的に通貨安方向に振れた後、景気が好転し、QEの真の効果が表れ出すと、通貨高方向へと振れるのが狙いのシナリオと言えそうだ。
本題のUSDJPYの今後であるが、この銘柄に対する現状での価格決定要因の主たるものは、以下と考えている。
・米株価
・原油価格
・日本株価
・米国長期国債金利
・他国を含めた、国際的なマネタリーベースバランス
フェアバリュー決定の前提条件である期間設定だが、日本の異次元緩和が終了するであろう1年後(MAR-2016)を切り取ってみたいと思う。
まず、米株だが、これは原油価格とも密接に関連してしまうが、独立して考えれば上昇一途と考えて良さそうだ。
景気指数は好調を維持し、政策金利引き上げも視野に入れている状況で、原油問題を除けば、下げ材料を探すほうが困難だろう。
資本主義経済が生んだ負の側面=「貧富の差の拡大」(国家間)が、ますます顕著化してくるであろう。
続いて、原油価格の予測についてだが、正直、筆者のスキルレベルをはるかに超えている。(テクニカル分析の手掛かりさえ見つからない)
恐らく、主要因であろうロシアのウクライナ問題が解決(経済制裁解除)に向かわない限り、原油価格の下落は止まらない可能性が高い。
1年後を見た場合、下落速度は緩やかになるだろうが、トレンドは継続しているとみている。
最悪のケースは、ロシアのデフォルト(まずない「はず」だが)により、世界経済が混乱(世界同時株安)してしまうことだろう。
世界恐慌になった場合、リスク回避通貨である日本円は、対米ドルで上昇し、USDJPYは下落することが予想される。
続いて、日本株だが、現状では米株連動性が強く、主体性のない値動きが続いている。
先の記事でも触れたが、自律下落を日銀、GPIFが買い支えているというように見えてしまう。
個別株価、新興株価が上がらない中で、日経平均だけが上がる局面が見受けられるのも、日経平均を下げたくない思惑の表れと感じてしまう。
「アベノミクス」の名のもとでの、日経平均とUSDJPYを同時に買うオペレーション(アルゴリズム系)スキームが、少しずつ崩れてきている可能性がある。
市場原理とは相反するスキーム(本来株高は通貨高圧力)であるため、いつかは是正されるであろう。
とはいっても、黒田日銀総裁の言葉「デフレ脱却のため、できることは何でもする」を思い出したい。
日本の場合、約束された物価上昇を実現する最も効果的な方法は、自国通貨価値を下げ、外貨価値を上げることだ。
輸入大国日本は、原材料、食材の多くを輸入に頼っている。
つまり、中期的に円安に導くことで、みかけだろうが何だろうが、輪転機がオーバーヒートするまで、とにかく物価を押し上げることに注力することは確実だ。
次に、米国長期国債の利回り低下懸念だが、筆者はUSDJPYへの影響は少ないとみている。
米国独り勝ちの状況下で、米国債が低リスク投資先に選択されることは容易に想像でき、ドルインデックスと逆相関関係で利回りは下がっていっても、なんら不思議ではない。
最後に、マネタリーベースバランス(各国通貨の流通量の偏り)だが、米ドルはQEを終え、マネタリーベースは横ばい推移、日本円はQE中であり増加中、ユーロはMAR-2015から増加局面を迎えるところだ。
EURJPY、GBPJPY、AUDJPYといった主要クロス円通貨は、すでに短期の高安勝負付けが円高方向で終わろうとしている。
だが、USDJPYをこれらクロス円と同列で扱うのは危険だ。
その気になれば、米国にUSDJPYの買い支えを依頼することだって想定される。
「目的達成のために、手段を選ばない」、「アベノミクスにおける円安誘導は必達事項」だ。
だが、日本には米国という巨大国家がついている。
リスク回避策は既に打っていると考えるのが妥当だろう。
黒田日銀総裁の21-JANの記者会見での、ECBの金融緩和の可能性を問われた際の「にやりとした微笑み」。
ユーロマネーの日本流入(日本株買い)予測のゆるぎない自信の表れではないか。
その黒田総裁の言葉「デフレ脱却のため、できることは何でもする」は、デフレ脱却は通過点の一つであって、真の狙いである「日本の生き残り」をかけた代表者としての決意表明と受けとった。
次回へ続く。
#Forex #Trading
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